昨日の寒さにはさすがにビックリしました。ガスストーブがすぐに使える状態で助かりました。季節の移り変わりは好きですが、本格的な寒さにはもう少し待っていてもらいたいものです。
オーダーシューズの革、底材のご紹介がある程度できましたので、今回は「靴の製法」についてお話いたします。靴の製法とは、靴本体(革を縫い合わせてできたもので、アッパーと呼びます)と底材を接合する方法です。靴の製法は実に様々なものがありまして、それぞれに特徴があります。delightful toolではマッケイ製法と9分仕立て(ハンドソーンウェルテッド製法)の2つからお選びいただき、靴を製作していきます。
まずはマッケイ製法。
こちらはマッケイ製法に使う中底(インソール)と呼ばれる革のパーツです。厚みは3ミリほど。マッケイ製法では中底、中底に折り込んだアッパー、靴底の3つを専用のミシンを使って直接縫い合わせて接合します。非常にシンプルな製法です。
出来上がった靴の内側(中底)と底面を見ると、縫い合わせた糸が見えます。
この上からもう1枚ゴム底やスポンジ底を接着剤で接合する方法(マッケイ+セメント製法)もあります。以前ご紹介したこちらの靴などは、マッケイ+セメント製法で作られています。
マッケイ製法の特長は履き始めから屈曲性が良く、軽いこと。またシンプルな製法ゆえに、デザインの制限を受けにくいです。すっきりとスマートな靴、またリラックスした軽やかな靴を作るには最適な製法です。
アッパーへの装飾追加やブーツ仕様でなければ、マッケイ製法でのオーダー価格は¥70,200(税込)です。ブーツの場合は+¥5,400(税込)のオプション料金がかかりますが、革や底材による価格の違いはございません。
次に9分仕立て。
こちらが9分仕立てに使う中底です。厚みは5ミリほどありますので、マッケイ製法に使う中底に比べてだいぶ厚みがあります。中底の裏面には溝を掘るなどの加工を施します。9分仕立てでは、加工された中底、中底に折り込んだアッパー、細革(ウェルト)の3つを手で縫い合わせます。その後、ウェルトと本底をミシンで縫い合わせます。マッケイとは違って縫いを2回かけることになります。
靴底の周囲にある、縫い目が走ったパーツがウェルトです。
底面にはウェルトと本底を縫い合わせた糸が見えます。
9分仕立てで作られた靴はマッケイ製法の靴に比べて重くなりますが、その分カッチリと耐久性の高い靴ができます。耐久性が高いからといって硬い靴ではなく、(多少の履き慣らしは必要ですが)柔軟性も十分に感じられます。また厚みのある中底は、履いていくうちにその人の足裏の形状に変化していきます。使い込むと履きやすくなると言われるのはそのためです。より長く付き合える靴、長めの距離を快適に歩ける靴を作るには最適な製法です。
アッパーへの装飾追加やブーツ仕様でなければ、9分仕立てでのオーダー価格は¥97,200(税込)です。ブーツのオプション料金はマッケイ製法と同様に+¥5,400(税込)ですが、革や底材による価格の違いはございません。
革靴において製法は大切な要素です。しかし同じ製法でも、どんな革や底材を組み合わせるかで靴の雰囲気も履き心地も変わります。大切なのはオーダーする目的に合わせて製法、革、底材などを適切に組み合わせることだと考えています。
「どのようなシチュエーションで、週にどのくらいのペースで履くのか?」「どのくらいの距離、どのような路面を歩くのか?」
オーダーしていただいた革靴が道具としてしっかり機能するよう、このような条件と靴の仕上がった雰囲気、ご予算などを加味して最適な組み合わせをご提案いたします。