マッケイ+セメント製法の考え方

マッケイ製法の靴には「軽やかさ」を求めています。

しかしマッケイ製法というと、修理の面で不安を抱かれる方もいらっしゃると思います。

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マッケイ製法は中底(足の裏が触れるパーツ)、そこに折り込んだアッパー(足を覆う革)、本底(地面に触れるパーツ)を専用のミシンで直接縫い付けて接合します。非常にシンプルな作りです。それゆえ本底の貼り替え(オールソール交換)を何回も行うことは難しいです。これがマッケイ製法で作られた靴の修理に対する不安につながっているのだと思います。

しかしオールソール交換はそんなに頻繁に行うものではありません。そもそも2回目、3回目のオールソール交換を行うまでに他の部分がもたない(アッパーの革切れなど)こともあります。マッケイ製法の靴も、消耗するパーツは修理することを前提に作られていますのでそこまで心配しなくても大丈夫。「適切な履き方をしていればマッケイ製法の靴も問題無く修理できる」というのが私の考えです。

とはいえせっかくの革靴。気兼ねなくオールソール交換を行えるものであって欲しいとの気持ちは私もあります。そこでお勧めなのが「マッケイ+セメント製法」で作られた靴です。

中底、折り込んだアッパー、それと「中板」というパーツをミシンで縫い付けます。

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指差している部分。色が少し違う、約3ミリの厚みがあるゴム板が「中板」です。

その中板に本底を接着します。

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本底を接着のみで接合する製法をセメント(セメンテッド)製法と言います。ですのでこの作りは「マッケイ+セメント製法」と言います。

マッケイ+セメント製法のメリットは、オールソール交換をする際に中板を残せることです。中板を残せるため、中板を接合した際のミシン糸を切らずに済みます。これなら中底やアッパーに負荷がかかりにくいです。しかしデメリットもあります。底周りに厚みが出るため、通常のマッケイ製法に比べて屈曲性は劣ります。良いところだけを取り込むことはできないので、その点はご理解ください。

delightful toolでは木型、革、デザインとのバランスを含めて、このマッケイ+セメント製法をお勧めしています。軽やかさに修理の合理性が加わる点は、非常に魅力的です。

マッケイ製法の靴に求めるもの

靴の製法に明確な優劣は無いと考えています。「こんな靴にしたい」との目的から、靴の製法は選ばれるものだと思うのです。

オーダーシューズの製法にハンドソーンウェルテッド(9分仕立て)とマッケイ製法を選んだのは、それぞれ「こんな靴にしたい」との考えがあるから。

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こちらのサンプルシューズは全てマッケイ製法です。(正確には黒靴以外は、マッケイ+セメント製法)

 

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靴の内部を覗くと、中底と底材を縫い合わせた糸が見えます。

 

マッケイ製法で作った靴は、以下のポイントを狙っています。

1. 少しでも価格を抑える。(ハンドソーンウェルテッドやグッドイヤーウェルテッドに比べて)

2. 履き始めから屈曲性を良くする。

3. 軽くする。

 

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ここに軽くてクッション性の良い底材(ビブラム2810ソール2060ソール)を組み合わせると、スニーカーに近い履き心地になります。柔らかさや軽さが全てではありませんが、スニーカー中心の生活をされている方にはこのバランスの靴が違和感無く履けるはずです。

私がマッケイ製法で作った靴に一番求めているのは、この「軽やかさ」です。

マッケイはグッドイヤーに劣るのか?

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セメンテッド、マッケイ、グッドイヤーウェルテッド、ハンドソーンウェルテッド…


革靴に興味を持って色々検索するか、靴雑誌を開けばほぼ確実に目にするワード達です。

上記のワードは全て「靴の製法」です。靴の製法というのは靴の上部(足を包む部分、アッパーと呼びます)と底材を接合する方法のこと。今回はそれぞれの製法の構造的な説明は省かせていただきますが、セメンテッド→マッケイ→グッドイヤーウェルテッド→ハンドソーンウェルテッドの順に製造における工程数が増えますし、人の手がかかります。ですので製法以外の条件が同等であれば、ハンドソーンウェルテッドの靴が一番高価になります。

※マッケイ製法とハンドソーンウェルテッド製法については、以前のブログでご紹介しております。

 

よくある誤解


ここで陥りがちなのが「工程数が多く、価格も高い製法で作られた靴が良い」という誤解です。例えばグッドイヤーウェルテッドの靴がマッケイの靴より絶対に優れていると捉えてしまうこと。これは実はもったいないです。靴の製法に関しては「明確な優劣は無い」と捉えていただいた方が、良い靴選びができます。

 

欲しい革靴のイメージが大切


大切なのはどんな革靴が欲しくて、どのように履きたいのか。なんとなくでも構いませんので、靴屋さんに行く前にイメージしてください。きちんとした靴屋さん、スタッフさんであれば的確なコミュニケーションでそのイメージを把握してくれるはずです。

「すっきりスマートな印象の靴」が欲しければ、お勧めされる靴はマッケイ製法かもしれません。

「長時間歩くため靴」が欲しければ、お勧めされる靴はグッドイヤーウェルテッド製法かもしれません。

「最初から柔らかく、価格が抑え目の靴」が欲しければ、お勧めされる靴はセメンテッド製法かもしれません。

靴の製法とは「この製法だから良い」ではなく、「(価格も含めて)このような靴にしたいからこの製法」として作る際に選ぶものです。ですので靴をお選びになる際も「この製法ありき」ではなく、「このように履きたいからこの製法」と考えると自然な流れで良いなと思います。もちろんこのご提案をきちんとするのは我々靴を販売するものの役割です。知識は必要ございませんので、ストレートに「こんな形、履き心地の靴が欲しい」とお伝えください。

マッケイ製法と9分仕立て

昨日の寒さにはさすがにビックリしました。ガスストーブがすぐに使える状態で助かりました。季節の移り変わりは好きですが、本格的な寒さにはもう少し待っていてもらいたいものです。

オーダーシューズの革、底材のご紹介がある程度できましたので、今回は「靴の製法」についてお話いたします。靴の製法とは、靴本体(革を縫い合わせてできたもので、アッパーと呼びます)と底材を接合する方法です。靴の製法は実に様々なものがありまして、それぞれに特徴があります。delightful toolではマッケイ製法と9分仕立て(ハンドソーンウェルテッド製法)の2つからお選びいただき、靴を製作していきます。

まずはマッケイ製法。

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こちらはマッケイ製法に使う中底(インソール)と呼ばれる革のパーツです。厚みは3ミリほど。マッケイ製法では中底、中底に折り込んだアッパー、靴底の3つを専用のミシンを使って直接縫い合わせて接合します。非常にシンプルな製法です。

 

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出来上がった靴の内側(中底)と底面を見ると、縫い合わせた糸が見えます。

この上からもう1枚ゴム底やスポンジ底を接着剤で接合する方法(マッケイ+セメント製法)もあります。以前ご紹介したこちらの靴などは、マッケイ+セメント製法で作られています。

 

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マッケイ製法の特長は履き始めから屈曲性が良く、軽いこと。またシンプルな製法ゆえに、デザインの制限を受けにくいです。すっきりとスマートな靴、またリラックスした軽やかな靴を作るには最適な製法です。

アッパーへの装飾追加やブーツ仕様でなければ、マッケイ製法でのオーダー価格は¥70,200(税込)です。ブーツの場合は+¥5,400(税込)のオプション料金がかかりますが、革や底材による価格の違いはございません。

 

次に9分仕立て。

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こちらが9分仕立てに使う中底です。厚みは5ミリほどありますので、マッケイ製法に使う中底に比べてだいぶ厚みがあります。中底の裏面には溝を掘るなどの加工を施します。9分仕立てでは、加工された中底、中底に折り込んだアッパー、細革(ウェルト)の3つを手で縫い合わせます。その後、ウェルトと本底をミシンで縫い合わせます。マッケイとは違って縫いを2回かけることになります。

 

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靴底の周囲にある、縫い目が走ったパーツがウェルトです。

 

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底面にはウェルトと本底を縫い合わせた糸が見えます。

 

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9分仕立てで作られた靴はマッケイ製法の靴に比べて重くなりますが、その分カッチリと耐久性の高い靴ができます。耐久性が高いからといって硬い靴ではなく、(多少の履き慣らしは必要ですが)柔軟性も十分に感じられます。また厚みのある中底は、履いていくうちにその人の足裏の形状に変化していきます。使い込むと履きやすくなると言われるのはそのためです。より長く付き合える靴、長めの距離を快適に歩ける靴を作るには最適な製法です。

アッパーへの装飾追加やブーツ仕様でなければ、9分仕立てでのオーダー価格は¥97,200(税込)です。ブーツのオプション料金はマッケイ製法と同様に+¥5,400(税込)ですが、革や底材による価格の違いはございません。

 

革靴において製法は大切な要素です。しかし同じ製法でも、どんな革や底材を組み合わせるかで靴の雰囲気も履き心地も変わります。大切なのはオーダーする目的に合わせて製法、革、底材などを適切に組み合わせることだと考えています。

「どのようなシチュエーションで、週にどのくらいのペースで履くのか?」「どのくらいの距離、どのような路面を歩くのか?」

オーダーしていただいた革靴が道具としてしっかり機能するよう、このような条件と靴の仕上がった雰囲気、ご予算などを加味して最適な組み合わせをご提案いたします。

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